11月12日 主日礼拝
礼拝説教
伊藤大輔牧師

マタイによる福音書27章1〜10節

イエスは捕らえられ、死刑の判決が下された。
主イエスの十字架は私たち人類に何をもたらしたのか。
代表としての12弟子。
彼らが経験したものが人類にもたらされたもの。
彼らは「イエスに着いてく」と言った。
どんなことがあってもイエスを離れない。
大切なものをちゃんと守る。
それが自分だと思っていた。
自分はちゃんとしている。
イエスが捕らえられる。
皆、散り散りに逃げ去った。
ペトロは人からイエスとの関係を尋ねられた時、
自分はイエスとは何の関係もない、と答えた。
自分でも思ってもいなかったもの。
言うはずが、するはずがないと思っていたもの。
それを彼は恥ずかしげもなく行った。
その自らの姿を知った時、彼は人知れず激しく泣き崩れる。
イエスの十字架は私たちに何を告げたのか。
人は何も知らない。
自分が何者か、知っているつもりになっている。
だが、本当は何も知らない。
人は何も知らない。
問題はここから。
何も知らない私たちは、その後、どのように生きたら良いのか。
ペトロはこの後、宣教活動に勤しむ。
ローマで殉教した彼の墓は300年後、コンスタンティヌス一世により教会が建設される。
サン・ピエトロ聖堂。
カトリック教会の総本山。
もう一方のユダは自殺をし、その生涯を閉じる。
ペトロとユダ。
彼らはイエスに対しては全く同じ。
三回もイエスを呪ったペトロ。
ふざけ半分で銀貨30枚で祭司長と取引をしたユダ。
どちらも、こんなことになるとは思っていなかった。
自分の予期していた未来とは全く違う現実に直面し、愕然とする。
ペトロとユダ。
イエスが捕まった直後の経験は全く同じ。
では、この両者をその後、分けていったものはなんなのか。
銀貨30枚。
ユダがイエスの居場所を祭司長に告げたことによる報酬。
イエスが裁判にかけられる。
有罪が確定する。
処罰は死刑。
ユダはそんな展開は想定だにしない。
とんでもないことが起こった。
それを引き起こしたのは自分だ。
銀貨30枚
これが自分の諸悪の根源。
持っていたくない。
見たくもない。
自分の悪
醜さ。
ユダは銀貨30枚を祭司長に返そうとする。
ところが祭司長は受け取らない。
「それはお前の問題だ。我々をそこに引き込むな」
持っていたくもない銀貨30枚
それをユダは神殿に投げ入れ、首をつる。
その銀貨30枚は祭司長に拾いあげられ外国人の墓地を購入の代金となった。
あってもなくても良いもの。
それに充てられる。
銀貨30枚
ユダも持っていたくなかったもの。
祭司たちも扱いたくなかったもの。
汚れた、忌み嫌われた銀貨。
この銀貨30枚がユダとペトロを分けた。
「あなたは地の塩、世の光」
イエスの言葉。
ユダもペトロも聞いていた。
分かったつもりになっていた。
だが、何も分かっていない。
あなたには世界を救う力がある。
世界の希望の灯になる。
ユダもペトロもこの言葉を今は信じられない。
自分は情けないもの。
罪に汚れただらしないもの。
塩であるはずがない
光であるはずがない。
世界のなんの役にも立たないもの。
「あなたは地の塩、世の光」
イエスはそんなことは百も承知で言っている。
嘘をついても
仲間を裏切っても
それでも、
そのお前が地の塩、世の光。
ユダは何をしたか。
銀貨30枚を捨てた。
自分の醜さを知らしめる銀貨
自分の罪を証明する銀貨
それを自分から引き離そうとした。
これは私ではない。
この醜いものは自分ではない。
一方のペトロはこれと異なる道を歩んだ。
おそらくその後、彼はこれに気がついた。
こんな私だがしょうがない。
これが私と生きていく。
醜いもの、みすぼらしいもの
それも私と抱えて生きていく。
ユダはどうすれば良かったのか。
銀貨30枚を持っていれば良かった。
それが私
ここに私がいると、受け入れて生きていく。
汚れた銀貨30枚も、
それも地の塩、世の光
今ある美しいもの
誰にでも自慢できるもの
それが地の塩、世の光ではない。
みすぼらしく、汚れたもの
人に見せられないもの
それが地の塩、世の光になっていく。
すべてが私
これが私
私に納得して生きていく。
この私は神に造られた。
神に良いと言って造られた。
何から何までが良いになる。
神がそう決めている。
今、私が自分に良い悪いを言っても始まらない。
私を決めるのは私ではない。
私は何も知らない。
人は何も知らない
だが私はもう決まっている。
地の塩、世の光
私を受け入れ、私を抱え
私を探しに
塩を、光を見つけに歩んでいく。
ユダにできなかったこと。
ペトロが行ったこと。

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