遠のいていく

2018年10月28日   

伊藤大輔牧師

創世記29章14-30節

 ヤコブの物語。

始めの読者はこれをどのように読んだのか。

始めの読者はイスラエルの民。

ヤコブは後に「イスラエル」と言われる。

読者はヤコブと自分を重ねたはず。

ヤコブの物語は私の物語。

 

そのヤコブは決して立派なものではない。

母親に唆されたとは言え、家族を騙そうとしたもの。

社会の信頼の基盤である家族、それを彼は壊した。

家を追われ叔父ラバンを頼り、ヤコブは旅立つ。

ラバンの娘ラケルと出会うと、

周囲のものを無視して彼女との関係を築こうとする。

また、ラバンの家に身を寄せている時も、

見えないところが美しいレアよりも、容姿のきれいなラケルとの結婚を望む。

 

イスラエル。

人々の尊敬を集めるものではない。

軽率な、傲慢なもの。

「それがイスラエルだ」

「それが私だ」

と聖書は語る。

 

そのヤコブがラケルとの結婚に際してラバンから約束を覆される。

ラケルとの結婚を望んでいたにも関わらずレアとの結婚を強いられる。

目的地にたどり着いたと思ったのにそれが遠のいていく。

失望

絶望。

 

人の目にはこれは絶望と映る。

しかし、それが真実なのか。

ヤコブが結婚に際して与えられたのは二人の姉妹と共にそれぞれの女奴隷。

この四人とヤコブは関係を持ち子どもをつくる。

それがイスラエル十二部族となる。

ヤコブは想定と違うことばかりを体験する。

叔父のラバンは変わる。

何度も約束を勝手に変更する。

人は変わる

変えてしまう。

 

家を追われ、ラバンの街に辿り着く前、ヤコブは神の言葉 を聞く。

「必ずあなたを連れ帰る。

あなたに約束したことを果たすまで私はあなたを見捨てない」。

神は変わらない。

 

叔父ラバンの約束の反故。

不愉快で、想定外のこと。

だが、これがあったから十二部族が生まれた。

人にはつらいことでも、

裏切られたことでも、

神は確かな礎を据えている。

人がどんなに予定を変更しても、

豹変しても、

神の予定に狂いは生じない。

 

ヤコブの物語は私の物語。

私には分からなくとも、

私には受け入れがたい現実であろうとも、

神はそこで確かな礎、

準備をしている。


この先に誰も知らない、

神だけがご存知の未来がある。

今日の私が無駄でない、

今の私とつながっている未来がある。


この先に私の喜びがある。

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