「静かな前進」

2019年10月27日

伊藤大輔牧師

 創世記34章1−31節 

聖書の中には残酷な物語も残されている。

妹を辱められた兄たちが復讐を果たす。

正義が行われた、家族の誇りを守った物語とも読める。

だが、物語の中で主人公のヤコブがこの息子たちの行動を非難する。

単純な復讐劇が記されているわけではない。


この物語のテーマは何か。 

復讐を実行したシメオンとレビ。

この二人はこの後に始まるヨセフ物語にも登場する。

物語は復讐劇を支持してはいない。

復讐を行ったシメオンとレビはどんなものだったか。  


ヨセフ物語でシメオンとレビはヨセフを助けようとしたり、

兄弟の身代わりになったりする。

家族を大切にする。

それは妹の一件でも共通している。

聖書はこの二人、こういう者にヨセフ物語が必要だと考える。


ヨセフ物語。

父親から愛されたヨセフを他の兄弟たちが妬んで、殺してしまう話。

死んだと思っていたヨセフは隣国エジプトで大臣となり、兄弟たちの前に現れる。

はじめヨセフに気がつかなった兄弟たちであったが、

ヨセフが身分を証し感動的な再会を果たす。

親しいものが一人を妬んで死に追いやる。

主イエスも味わったもの。

ヨセフとの再会。

主イエスの復活。

ヨセフ物語の登場人物、シメオン、レビは復活を経験した。 


家族の屈辱を果たす正義の実行。

彼らに足りなかったもの。

復活への信仰。 


復活。

死という絶対的な淵。

その向こうには何もない。

だがその暗闇の向こうにも神の備えがある。

明るい世界がある。


復活を信じる。

シメオン、レビは最後、動かし難いものが現実にはあると思っていた。

辱めを受けた妹は一生苦しむと思っていた。

家族、民族、国、傷つけられたらもう取り返しがつかない。

だから復讐をする。

世界中、どこででもいつでも行われてきたこと。

世界中にシメオンとレビはいる。

復活を信じられないものが行う正義。 


この先の向こうに必ず次の世界が待っている。

復讐を必要としない。

それは逃げ腰、無責任と非難もされよう。

忍耐がいる。

復活を信じる。

その心はこの現実を神の造った真の世界へと静かに進めていく。 

日本基督教団本多記念教会オフィシャルサイト

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